任天堂(7974)の岩田聡元社長は本当に優秀な経営者だったのか

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「天才プログラマー」として名を馳せた岩田元社長。

岩田氏は2015年7月11日にお亡くなりになりましたが、岩田社長の残した功績は任天堂にとって大きな財産として君臨しているのは間違いのない事実でしょう。


出典 nintendoeverything.com

『ピンボール』

『星のカービィーシリーズ』

『MOTHER2』

これらの任天堂を代表する名作ゲームを開発した岩田氏は、任天堂という巨大企業のブランド価値を高めただけではなく、「今後も利益を得られるキャラクター権」を任天堂に残した功労者です。

任天堂の強みは腐るほどありますが、やはり一番の強みとして注目しなくてはいけないのが知的財産権でしょう。

マリオ、カービィー、ワリオといった数多くの有名キャラを保有している任天堂は「キャラクターの知名度だけでゲームが売れる」というブランド戦略に成功している会社です。

その任天堂のブランド化戦略に貢献したのが岩田氏です。

任天堂の知的財産権の枠を増や任天堂という会社の強化に大きな貢献を果たしたのが岩田氏の功績です。

HAL研究所の経営再建を成功させたことも有名で、岩田氏がHAL研究所時代に開発したゲームがきっかけで業績回復を成し遂げたというエピソードも残っています。

そうであるがゆえに岩田氏には、「非常に優秀な経営者」という評価が主流となっていますが、私はそうは思いません。

死人に鞭打つのは人としてどうかと思うのですが、私は岩田氏が優秀なプログラマーだと思っていても優秀な経営者だとは思っていません。

勿論、理由はいくつかあるのでその理由を解説して頂きます。

1,岩田氏が社長を務めているのに任天堂の売上高は低下し続けている。

これは四季報で見れば一発で分かるデータなのですが、岩田氏が経営の采配を振るっていたときの任天堂は紛れも無い「衰退企業」でした。

ソーシャルゲームの圧力に負け、赤字を繰り返す任天堂にかつての栄光はないように思われていました。

・2013年連結決算 売上高6354億2200万円

・2014年連結決算 売上高5717億2600万円

・2015年連結決算 売上高5497億8000万円

ご覧の通り、任天堂は年々売上高を減らし続けています。

ここで素朴な疑問が浮かぶのですが、「本当に優秀な経営者が売上高を減らし続けるだろうか?」と私は思いました。

優秀な経営者の代表格はソフトバンクの孫正義氏です。孫さんはM&A戦略を通じて売上高や企業価値の向上に努め、投資家に利益を還元してきました。本当に優秀な経営者というものは拡大戦略を成功させるのです。

しかし、岩田氏は拡大戦略を成功させるどころか、売上高の低下を招き続きました。

 

2,経営が安定していない任天堂

任天堂は古豪企業であり、巨大企業でもありますが経営は安定していません。

2014年に232億2200万円の赤字を出した任天堂はかつての自信を失っていました。しかし、スプラトゥーンのヒットによってかつての自信を取り戻したように見える任天堂ですが、私の予測ではまたいつか赤字になると見込んでいます。

これは岩田氏だけを責めることができないのですが、元々ゲーム業界というものは当たり外れがあって当たり前だからです。

だから任天堂が赤字になるのも仕方ないのですが、逆に言えば任天堂ほど金を持っていて人的資源も豊富な会社が「当たりゲームを出さない」というのはまずありえないのです。

ありえないというか、あってはならないことなのです。

ゲーム業界は当たるときもあれば外れることも多い業界。で、あるからこそ、任天堂が赤字のままでいるのはありえないし、黒字のまま経営を継続するのは難しいと私は分析しています。

どちらにせよ、岩田氏が社長に就任している期間で巨大な赤字を出したのは事実であり、売上高が低下し続けていることもデータとして残っています。

更に言えば現在の任天堂の株価は2万6050円ですが、上場来最高値は2007年11月1日の7万3200円になります。

現在は株価を戻しつつあるとは言え、ただでさえ安定しないゲーム業界。

最盛期の半分以上も株価を減らした岩田氏が本当に経営者として優秀でしょうか?

任天堂株主が株主総会にて業績不振の改善策として「リストラをした方が良いのでは?」と質問したことに対し、岩田氏が回答した返答がこちらです。


出典 ohga-shrugs.wikia.com

「社員が不安におびえながら作ったソフトは人の心を動かさない」

これは岩田氏の名言であり、岩田氏がいかに人情味溢れる人格者であるかを象徴するエピソードとなって語り継がれていますが、私はこれを好意的に受け止めていません。

確かに、岩田氏のおっしゃることは本質的には間違っていないのかもしれません。

お客様が遊ぶためのゲームを作るのに、リストラの危機に晒されていたら本当に面白いゲームは作れない。

ただ、これってよく考えると滅茶苦茶暴論なんですよ。

この意見が通るのであれば、「ゲームを作る会社はリストラしたらダメだけど、自動車を作っている会社はリストラしても良い」という意見がまかり通りますから。

リストラ改革を成し遂げて経営再建を果たした経営者が存在します。それは日産自動車 (7201)のカルロス・ゴーンであり、ゴーンは経営不振にあえぐ日産自動車を改革するために強固なリストラ戦略を実行し、見事に業績を立て直しました。


出典 www.automotive.com

ゴーンは「コストカッター」と呼ばれおり、リストラ戦略によって今も様々な人から恨みを買って批判されていますが、私は強くゴーンの行動を支持します。

日産自動車は本当に経営危機に立たされていました。ゴーンが入社した当初、日産自動車は約2兆円の有利子負債を抱えていたのです。

一方、任天堂は有利子負債ゼロの優良企業。財務状態は健全です。

日産自動車は本当に追い詰められていました。

莫大な有利子負債を抱え、国内の自動車販売も不振。そんな崖っぷちな状態に立たされていた日産自動車を救ったのがゴーンなのです!

ゴーンはリストラという強攻策を発動させましたが、背景を見たら仕方ないでしょう。日産自動車は「リストラしないで経営再建したい」と悠長なことを言ってられる状況ではなかったのですから。

一方、任天堂はどうか?

先ほど私は岩田氏の名言を張りましたが、はっきり言って岩田氏の発言は「強者の怠慢」であるとしか受け止めていません。先ほども申し上げた通り、任天堂は有利子負債ゼロで自己資本も1兆円を超える超リッチ企業です。

つまり、お金という面では滅茶苦茶余裕があるのです。

本当に追い詰められた日産自動車。業績不振だけど、まだまだ資産が残っている任天堂。経営再建の難易度の高さは比べ物にはなりません。

岩田氏が「社員が不安におびえながら作ったソフトは人の心を動かさない」と語り、リストラを実行しなかったのもただの美談だと捉えないで頂きたい。岩田氏がこういうカッコいいことを言えたのは、「元々任天堂には金があって、日産自動車のように追い詰められていないから」という事情があるのです。

この事情を理解しないで表面上の言葉だけに惑わされないで欲しい。

日本ではゴーンは非情な経営者、岩田氏は人情味溢れる経営者として評価されていますが、とんでもない話です。もし岩田氏が日産自動車のような状況に陥っていたら先ほどの発言を述べることができたでしょうか? 私は絶対に無理だと思っています。


なぜならば本当に追い詰められている状態でそんなことを言ったらただの馬鹿だからです。

つまり、「社員が不安におびえながら作ったソフトは人の心を動かさない」というセリフは追い詰められていない強者の余韻を感じる言葉であり、言葉の真意というものはそのときの状況を理解した上で分析しなくてはいけません。

岩田氏は人格的に優れており、プログラマーとして優秀だったのは間違いないでしょう。

ただ、岩田氏が経営者として優秀かと問われればかなり微妙なところで、私は非情な戦略を実施したゴーン氏の方が経営者として確実に優秀だと思っています。

人の評価は見方によって変わります。一見美談のように見えることも、その状況だから言えるということもあるのです。

人の真価、本性は本当に追い詰められたときに発揮されます。

人格的に優れており、優秀な開発者だった岩田氏がお亡くなりになってしまったのは経営的に任天堂にとって本当に大きな損失なのか。

売上高や株価という面からしっかり考える必要があるのは確かです。


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